2025年07月16日
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30年超えビルの分電盤は危険信号?──“経年故障”を未然に防ぐ更新タイミング
突然の停電でテナントがパニック?
「営業中にフロアが真っ暗になり、エレベーターもパソコンも止まってしまった……」
停電が起こればテナントの売上はゼロ、クレーム対応に追われ、オーナーの信用は一気に低下します。
原因の多くは 分電盤の経年劣化。
本記事では、分電盤の基礎から更新タイミング、費用、補助金までを 専門用語をできる限りかみ砕いて 解説します。
[1 分でわかる分電盤]
分電盤は外部から入ってくる電気を各テナントへ振り分け、異常時には自動で遮断して火災や感電を防ぐ “ビルの電気の交差点”。
家庭のブレーカー BOX を大型化した装置と考えるとイメージしやすいでしょう。
1|分電盤の役割と仕組み
家庭用ブレーカーの大型版
受変電設備で安全な電圧に変換された電気は、分電盤を経由して照明・空調・テナント各戸へ送られます。
異常電流が流れると遮断器が瞬時に作動し、火災や機器故障を防止します。
主要パーツ(かんたん解説)
・漏電ブレーカ:電気が漏れた瞬間に回路を遮断。
・配線用遮断器:過電流や短絡(ショート)から機器を保護。
・計測メーター:テナントごとの電力使用量をリアルタイム表示。
2|寿命はおよそ 20 年――劣化サインを見逃さない
なぜ 20 年で更新と言われるのか?
日本電機工業会(JEMA)は「汎用高圧機器の更新目安 20 年」を推奨しています。
樹脂絶縁材は熱で硬化・亀裂が入り、金属接点は摩耗。保守次第で 最大 30 年 持つ場合もありますが、20 年を超えたら計画更新を検討するのが安全策です。
オーナーでも見つけられる 5 つの異常
1.ブレーカが頻繁に落ちる
2.盤の表面に触ると熱い
3.焦げ臭いにおいがする
4.配線被覆が変色・亀裂
5.扉や端子に赤サビがある
ワンポイント:1 つでも当てはまれば、専門業者による点検をおすすめします。
3|法定点検の義務と“見逃しポイント”
法律 | 主な対象 | 最低頻度 |
---|---|---|
電気事業法 | 高圧受電設備(分電盤含む) | 年1回以上 ※ |
建築基準法 | 建築設備全般 | 1年以内ごと |
※ 無停電点検を間に挟むと、停電を伴う年次点検は 3 年に 1 回まで延長可能。
年 1 回でも見逃す“隠れ劣化”
法定点検は「目に見える不具合」の確認が中心です。
端子トルクの低下や内部絶縁材の微細な亀裂は発見しづらいため、サーモグラフィ診断 や 増し締め点検 を追加すると安心です。
4|交換か延命か? 判断 3 ステップ
1.年数と環境:築年数と更新履歴をチェック。
2.劣化サイン:2 章の 5 項目で異常を確認。
3.コスト試算:停電 1 日で失う売上 vs. 更新費用を比較。
トラブルが頻発するなら、応急修理より 計画更新 のほうがトータルコストを抑えられる場合がほとんどです。
5|更新工事の流れと費用目安
標準的な工事ステップ
1.現況調査(回路図・使用電流を確認)
2.設計・見積(容量アップ+余裕設計)
3.夜間・休日工事(仮設電源を使い停電ゼロへ)
4.試運転・竣工検査(動作確認・書類提出)
概算費用
- 中小規模ビル:150〜300 万円(主幹 300A 前後)
- 大規模ビル:400〜700 万円(600A 超)
費用は回路数・容量・安全設計によって変動します。無料調査で正確な見積をご確認ください。
停電時間を最小化するコツ
24 時間稼働のサーバーがある場合は 仮設電源で二段階工事 を採用し、本番切替を深夜 2 時間で完了させる方法が有効です。
6|補助金で賢く負担軽減
国の省エネ補助金(2025 年度)
・正式名:省エネルギー投資促進支援事業費補助金〈設備単位型〉
・補助率:1/3〜1/2(中小企業優遇あり)
・公募期間:2025 年 3–9 月(予定)
東京都 BCP 助成金(例)
・事業名:BCP 実践促進助成金(2025 年度)
・助成率:中小企業 1/2、小規模企業 2/3
・上限額:1,500 万円
所在地ごとに制度が異なるため、必ず最新情報を確認してください。
申請フロー & よくある落とし穴
1.現況調査 → 省エネ計算書作成
2.交付申請(締切厳守)
3.採択後に工事発注・着工
不採択になりやすい例
・省エネ試算の根拠不足
・交付決定前に着工・発注
・評価項目(BCP 効果など)の記入漏れ
7|FAQ——よくある質問
Q1:まだ故障していないが交換すべき?
20 年を超えたら計画更新が推奨です。突然停電が起きてからでは、修理費も損失も大きくなります。
Q2:工事中は本当に停電ゼロ?
仮設電源と夜間作業を組み合わせれば、テナントへの停電影響を “ゼロ〜数分” に抑えられます。
8|まとめ
・20 年 が更新の分岐点。早めの計画でトラブルとコストを最小化。
・補助金を使えば実質負担を大きく削減可能。
本記事の費用・補助金情報は 2025 年 7 月時点の公開資料を基に作成しています。最新の制度詳細は必ず公式サイトでご確認ください。