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2025年06月18日

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空調と電源の意外な関係~エアコン設置前に必ず押さえたい電気工事のポイント~

猛暑や厳冬が当たり前になった近年、オフィス・店舗はもちろん戸建て住宅でも複数台のエアコンを導入・増設するニーズが高まっています。しかし「機器選び」や「配管ルート」に気を取られるあまり電源まわりの確認を怠り、ブレーカが頻繁に落ちる、あるいは本来の性能を発揮できないといったトラブルが後を絶ちません。本稿では、エアコン設置時に見落とされがちな電気工事のポイントを分かりやすく解説します。この記事を読めば、追加費用再工事を未然に防ぎ、安心して空調計画を進められるはずです。

 

 

 

 

1. エアコンは「高負荷電気機器」――まず意識改革から

チェックポイント 3 つ

1.最大消費電力・運転電流を確認する

2.始動時の突入電流に注意する

3.分電盤・契約容量の余裕を必ず把握する

 

POINT

・壁掛け型でも最大消費電力は 約1.5 kW、業務用パッケージでは 5 kW 前後が一般的で、7 kW 超の大型機も存在します。

・起動時には定格の 5〜7 倍程度の突入電流が流れる。

・築年数が古い建物は分岐回路・契約容量とも不足しがち。

 

エアコンは「空気を冷やす/温める機械」という印象が強いものの、実際にはインバータやコンプレッサを搭載した高負荷の電気機器です。カタログには「消費電力」だけでなく「運転電流」「始動電流」が必ず記載されています。これらを確認したうえで、既存の分電盤と契約容量の余裕をチェックしましょう。

 

 

 

 

2. 電源容量を見積もる 3 ステップ

ステップ やること 確認先 目安
エアコンの運転電流・始動電流を把握 メーカーカタログ 例:運転 6 A / 始動 18 A
分岐回路と契約容量を確認 分電盤・電力会社 分岐 20 A、契約 30 A など
余裕がない場合は容量アップを検討 電気工事会社 分岐増設/主幹ブレーカ変更

たとえば 20 A の分岐回路に 14 A のエアコンを接続した場合、同じ回路に電子レンジやドライヤーが加われば一気にオーバーします。専用回路を設けるか、主幹ブレーカをアップグレードするか――早めの判断がコスト削減のカギです。

 

 

 

3. 古い分電盤は要注意――改修チェックリスト

1.分岐ブレーカは足りているか(目安:回路数の 約20% を空けておく)

2.配線の太さは許容電流を満たしているか(VVF 2.0 mm² 以上推奨)

3.アース付きコンセントを設置しているか

4.漏電遮断器(ELB)が設置されているか

5.築 30 年以上なら分電盤ごと交換を検討

 

コスト目安
・分岐ブレーカ増設:1〜2 万円/回路
・VVF 張り替え:数百円〜1,000 円/m 程度(材料+工賃)
・分電盤全面交換:8〜15 万円

 

業務用では室外機と室内機の距離が延びるほど電圧降下が問題になります。メーカーの「推奨電線サイズ」を参考に、CVT ケーブルなど太い幹線へ切り替えましょう。

 

 

 

4. ケーススタディで学ぶ――電気工事が必須になる典型例

4‑1. 飲食店(100 V → 200 V へ入れ替え)

・問題:100 V 回路のまま 200 V 高効率機を導入すると配線容量不足。

・対策:分電盤から 専用 200 V 回路を新設し、許容電流に合うケーブルとアースを確保。

・リスク:過熱・発火による火災、機器故障、営業停止。

 

4‑2. テナントビル(マルチ空調導入)

・問題:室外機の運転電流が大きく、主幹ブレーカと幹線が容量不足。

・対策:主幹ブレーカを上位容量へ更新し、幹線を太化。必要なら高圧受電設備側も見直し。

・リスク:主幹トリップによるビル全体停電、設備停止。

 

4‑3. 戸建て 2 階へ新設

・問題:1 階分電盤からの長距離配線で電圧降下・ケーブル発熱リスク。断熱材内の発火も懸念。

・対策:2 階 専用回路敷設、耐熱ケーブル採用、ドレン配管ヒーター用回路を追加。

・リスク:配線焼損、結露漏電、壁内火災。

 

共通の教訓
設置後に配線をやり直すと壁・天井の補修費がかさみ、工事費が数倍に膨れ上がります。機器選定と同時に電気配線計画を立てることが最も安上がりで確実です。

 

 

 

5. まとめ――“見えない部分”に先手を打とう

エアコンは快適性を左右する重要設備ですが、その性能を 100% 引き出すには適切な電源環境が不可欠です。容量不足やブレーカ設定を甘く見ると、故障だけでなく火災・感電の危険も高まります。

・運転電流・始動電流を確認

・契約容量と分岐回路の余裕を数値で把握

・必要なら分電盤改修・専用回路新設を実施

 

この 3 ステップを徹底すれば、多くのトラブルを未然に防げます。買い替えや増設を検討する際は、電気工事会社や電気工事士に早めに相談し、“見えない部分”に先手を打ちましょう。