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2026年01月23日

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利用者目線で見る公共施設の電気設備|「暗い・寒い・うるさい」は設計のせい?

公共施設を利用していると、「なんとなく暗い」「空調が効きすぎて寒い」「音が気になって落ち着かない」と感じた経験は多くの人にあるのではないでしょうか。病院や図書館、体育館といった施設では、電気設備が法令や基準を満たして整備されているにもかかわらず、利用者からこうした不満が寄せられることがあります。

こうした違和感は、必ずしも施工ミスや設備不良が原因とは限りません。多くの場合、設計や設備計画が「使う人の体験(UX)」ではなく、「管理・施工の視点」を中心に組み立てられていることが影響しています。本記事では、利用者の目線から公共施設の電気設備を見直し、「暗い・寒い・うるさい」と感じる理由と、その背景にある設計上の考え方について整理します。

 

 

 

1. 利用者が感じる「使いにくさ」は電気設備と無関係ではない

公共施設の電気設備は、照度や温度、騒音レベルなどが各種基準に基づいて設計されています。しかし、基準を満たしていることと、利用者が快適に感じることは必ずしも一致しません。人が感じる明るさや温度、音の大きさは、数値だけでなく空間の広さや滞在時間、心理的な状態にも大きく左右されます。

設計段階では、効率や管理のしやすさが重視される一方で、利用者がどこに座り、どのくらいの時間を過ごすのかといった細かな行動まで十分に想定されていないことがあります。その結果、設備としては問題がなくても、「使いにくい」「居心地が悪い」と感じられる空間になってしまうのです。

 

 

 

2. 「暗い」と感じる施設|照明設計の盲点

「照度は基準を満たしているのに暗く感じる」という声は、公共施設でよく聞かれます。この原因の一つが、照明の配置や空間全体のバランスです。天井の高い空間では、床面の照度が十分でも、壁面や天井が暗いと全体的に暗い印象を受けやすくなります。

また、壁や床の色、素材による反射率の違いも、明るさの感じ方に影響します。特に、老朽化に伴う内装の変色や汚れがあると、同じ照明でも暗く感じることがあります。

施設の用途によって、適切な明るさの考え方も異なります。病院では安心感を与える柔らかな明るさが求められ、図書館では長時間の読書や作業に適した均一な照明が重要です。一方、体育館では競技やイベントに応じて、明るさを切り替えられる柔軟性が求められます。照明更新の際にLED化を進めると、色味や眩しさの変化によって、かえって不満が生じるケースもあるため注意が必要です。

 

 

 

3. 「寒い・暑い」と感じる原因は空調だけではない

室内の温度に関する不満は、空調設備の性能だけが原因とは限りません。照明器具や電気設備の発熱量、制御方式も、室内の温熱環境に影響を与えます。従来の照明からLEDへ更新することで発熱が減り、以前より寒く感じるようになることもあります。

また、公共施設では管理のしやすさから、一つのエリアをまとめて制御する「一律制御」が採用されることが少なくありません。しかし、利用者の活動量や滞在時間は場所によって異なるため、同じ温度設定でも「寒い」「暑い」という感じ方に差が生じます。

利用者が自由に調整できない環境では、小さな不満が積み重なり、施設全体の評価に影響を及ぼすことがあります。電気設備の計画段階で、ゾーニングや制御方法を工夫することが、快適性向上につながります。

 

 

 

4. 「うるさい」と感じる意外な電気設備

「うるさい」という不満は、空調の送風音だけでなく、電気設備そのものが発する音に起因することもあります。照明器具の内部部品やインバータ、電気盤の稼働音などは、静かな空間ほど目立ちやすくなります。

特に図書館や病院では、わずかな音でも気になりやすく、利用者の集中力や安心感を損なう要因になります。設備が老朽化すると、部品の劣化により音が大きくなることもあり、更新や調整が必要になる場合があります。

 

 

 

5. 施設ごとに違う「利用者体験」と電気設備の関係

病院では、利用者が長時間滞在し、不安や緊張を抱えていることが多いため、照明や音環境が心理的な負担に直結します。明るすぎず暗すぎない照明や、静かな環境づくりが重要です。

図書館では、集中して作業や読書を行う利用者が多く、明るさのムラやわずかな騒音が大きなストレスになります。均一な照明と静音性の高い設備が求められます。

体育館では、競技やイベントなど用途が多様であり、照明や音響を状況に応じて切り替えられる柔軟性が重要です。同じ電気設備であっても、施設の用途によって評価が大きく変わる点を意識する必要があります。

 

 

 

6. なぜ設計・工事の段階で気づきにくいのか

設計者や施工者は、完成後の施設を日常的に利用する立場ではありません。そのため、図面や基準を満たしていても、実際の使い心地までは把握しきれないことがあります。

また、利用者の不満は、施設が供用されてから初めて顕在化することが多く、完成時点では問題として認識されにくい傾向があります。この構造が、同様の課題が繰り返される原因の一つとなっています。

 

 

 

7. 利用者視点を取り入れた電気設備計画の考え方

利用者視点を取り入れるためには、設計段階で実際の利用シーンを具体的に想定することが重要です。どの場所に誰がどのくらい滞在するのかを整理することで、照明や制御の考え方が変わってきます。

改修や更新工事の際には、すべての設備を一度に更新しなくても、照明の配置変更や制御方式の見直しなど、小さな改善から始めることが可能です。こうした工夫は、比較的少ない工事でも利用者満足度を大きく向上させることがあります。

 

 

 

8. まとめ

公共施設で感じられる「暗い・寒い・うるさい」といった不満は、必ずしも施工不良によるものではなく、電気設備の設計や制御が利用者体験を十分に考慮していないことが原因となる場合があります。

今後の新築や改修においては、法令や基準を満たすだけでなく、「使う人の目線」に立った電気設備計画が重要になります。利用者視点を取り入れることが、施設の快適性向上やクレームの低減につながり、より評価される公共施設づくりにつながっていくでしょう。