2025年10月21日
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オフィス移転・リニューアル時の電気工事チェックリスト──快適で安全な職場づくりのために
オフィスの移転やリニューアルを計画する際、デザインや家具配置にばかり目が向きがちですが、実は「電気工事」の計画こそが快適な職場づくりのカギを握ります。
電源の位置や照明、ネットワーク設備などを後回しにすると、工事直前のトラブルや予算超過を招くことも少なくありません。
特に近年は、在宅勤務対応やIT機器の増加により、オフィスの電力需要が大きく変化しています。
本記事では、移転やリニューアル時に押さえておきたい電気工事のポイントを、チェックリスト形式で解説します。
1. 電気工事の全体像を把握する
まず理解しておきたいのは、「電気工事」とは単なるコンセント設置や照明交換にとどまらないということです。
電源や照明だけでなく、通信配線、防災設備、空調用の電源など、オフィスのあらゆる機能を支える基盤工事のことを指します。
オフィス移転・改装で電気工事が必要になる主なケースは次の通りです。
●間仕切りやデスクレイアウト変更に伴うコンセントの移設
●照明の位置変更やLED照明への切り替え
●LAN・電話・Wi-Fiなどの通信配線の整備
●サーバー・複合機・大型モニターなど機器増設による電源追加
●空調設備の更新や増設に伴う電源容量の見直し
工事は「現地調査 → 設計 → 見積り → 施工 → 検査・引渡し」という流れで進行します。
スケジュール調整を誤ると内装工事とのバッティングが起きるため、早い段階で電気工事業者を交えておくことが重要です。
2. 移転・リニューアル時の電気工事チェックリスト
チェック①:電源容量の確認
OA機器やサーバーなどを同時に稼働させる場合、既存の電源容量では足りないことがあります。
ブレーカーが頻繁に落ちる原因にもなるため、全機器の電力使用量を試算し、必要であれば分電盤や受変電設備を強化しましょう。
チェック②:コンセントの位置と数
レイアウト変更に伴って最適な位置にコンセントを設けることは、日常業務の効率に直結します。
デスク1台につき最低2口、将来の増員を見据えて余裕を持たせるのが理想です。
チェック③:照明計画と明るさ
照明は雰囲気だけでなく作業効率にも影響します。
事務所では一般的な事務作業で300ルクス以上が法令で求められており、JIS基準では作業内容に応じて500〜750ルクス程度が推奨されています。
省エネ目的でLED照明や人感センサーを導入する企業も増えています。調光機能付き照明を採用すれば、会議・休憩など用途に応じた照度調整も可能です。
チェック④:ネットワーク・通信配線
LAN・Wi-Fi・電話線の配線経路を整理し、電力線との干渉を避けるように計画します。
OAフロアやケーブルダクトを活用すると、配線が露出せず美観を損ないません。通信機器が多いオフィスでは、情報コンセントの増設も有効です。
チェック⑤:空調・換気との連携
空調設備は法令で一律に義務付けられてはいませんが、内線規程に基づき定格電流や始動電流を考慮した専用回路を推奨します。
容量不足だと機器が正常に動作しない場合もあるため、空調業者と電気工事業者の連携を図り、ブレーカーや回路の設計を一体で進めることがトラブル防止につながります。
チェック⑥:非常用電源・防災設備
停電時にもサーバーや非常灯が稼働するよう、UPS(無停電電源装置)や非常用発電機の設置を検討します。
BCP(事業継続計画)の観点からも、非常電源の確保は企業の信頼性を高める要素です。
3. 工事業者選びのポイント
オフィス施工に慣れた業者は、電気・通信・空調などを総合的に扱うノウハウを持っています。
複数業者を分けるよりも、内装と電気をワンストップで対応できる会社を選ぶとスムーズです。
また、見積書の内訳を丁寧に説明してくれるか、図面や照度計算など技術的な提案があるかも信頼性を見極めるポイントです。
テナントビルの場合は、物件により指定業者や事前申請が定められている場合があるため、契約前に管理規約を確認しておきましょう。
4. トラブルを防ぐための注意点
よくあるトラブルとしては、次のようなケースが挙げられます。
●レイアウト確定の遅れによる追加工事・納期遅延
●電力不足によるブレーカーの頻繁な遮断
●照明の色味や明るさが統一されていない
こうした問題を防ぐには、設計段階で「配線図」「電気負荷表」を共有し、回路ごとの系統を明確にしておくことが重要です。
施工後には配線図や回路図をデータでもらい、将来のメンテナンスにも備えましょう。
5. コストとスケジュールの目安
電気工事の費用は規模や内容により異なりますが、一般的には内装費全体の10〜20%程度を目安とするケースが多いといわれています。
ただし、建物規模や既存設備、照明仕様などにより大きく変動するため、あくまで参考値と考えるのが安全です。
中規模オフィスでは数百万円単位になることもあり、早めに見積りを依頼しておくと安心です。
工期は通常、1〜2か月前からの打ち合わせが理想ですが、短納期の場合は仮設配線による先行対応も可能です。
6. まとめ:電気工事を制する者がオフィス移転を制す
オフィスの電気工事は、見た目では目立たないものの、快適で安全な職場づくりを支える土台です。
移転やリニューアルを成功させるには、レイアウトやデザインだけでなく、電源や照明、通信といった「見えない設計」にも目を向けることが欠かせません。
早期の計画、専門業者との連携、現地での確認を徹底すれば、トラブルを未然に防ぎ、長期的に働きやすいオフィスを実現できるでしょう。
