BCPと電源インフラの重要性

近年、地震や台風、豪雨といった自然災害の頻発により、企業の事業継続計画（BCP：Business Continuity Plan）への関心が急速に高まっています。なかでも停電対策は、業務継続の要となる重要なテーマです。そこで注目されているのが「高圧受電設備」と「非常用発電機」の連携です。

本記事では、停電という非常時においても業務を継続させるために、高圧受電設備と非常用発電機の連携がなぜ重要なのか、そしてどのように導入・設計すべきかについて、実務的な観点から詳しく解説します。

 

 

 

1. なぜ今、“電源インフラ”がBCP対策において注目されているのか？

日本は世界でも有数の自然災害大国であり、地震、台風、集中豪雨による停電は年々増加傾向にあります。2021年の福島県沖地震や2022年の台風15号では、大都市圏でも大規模停電が発生し、企業活動に甚大な影響を及ぼしました。

停電の影響は生産ラインの停止、データセンターのダウン、医療機器の停止など、多岐にわたります。一方で、災害時でも業務を継続できる企業は、顧客や取引先からの信頼性を高め、社会的評価の向上にもつながります。電源インフラの整備は、単なる設備投資ではなく、企業価値を高める戦略的BCP施策です。

 

 

 

2. 高圧受電設備とは？企業インフラの要を担う仕組み

高圧受電設備は、電力会社から6,600Vの高圧で供給される電気を受け取り、施設内で使用可能な電圧に変圧・分電し、安全に供給する役割を担う装置です。契約電力が50kWを超える施設（例：工場、大型ビル、病院など）では必須のインフラとなります。

特に「キュービクル式受変電設備」が一般的であり、施設内すべての電力供給の起点となるため、万が一停止すると全業務に影響を及ぼします。したがって、定期的な点検や部品の更新による保守管理が非常に重要です。

 

 

 

3. 非常用発電機の導入で得られる3つのBCPメリット

1. 停電時の電力供給を継続

非常用発電機が稼働することで、オフィスの照明、通信設備、生産ライン、冷蔵・空調設備など、業務に必要な機能を維持できます。

2. データ・セキュリティ・設備保全

突然の停電によるシステム障害やデータ破損を防ぎ、ITインフラや精密機器の損傷を回避します。

3. 避難所・地域支援としての活用

特に公共施設や病院では、非常時に地域住民の避難所として活用されることもあり、社会貢献および信頼性の向上にもつながります。

 

 

 

4. 高圧受電設備と非常用発電機の最適な連携設計とは？

高圧受電設備と非常用発電機の連携で不可欠なのが、「自動切替開閉器（ATS：Automatic Transfer Switch）」の導入です。ATSは停電を検知すると瞬時に非常用電源へ自動で切り替える装置であり、切替の遅延による業務中断を防ぎます。

また、供給対象を全館にするのか、重要機能（サーバー・照明・冷蔵設備など）のみに限定するのかを明確にして設計する必要があります。

燃料選定（軽油・都市ガス）も、運用コスト・保存性・調達性を踏まえて検討しましょう。加えて、想定停電時間（例：72時間）に応じた燃料備蓄の計画も重要です。

さらに、消防法や電気事業法などの法規制にも対応した設計が求められます。設計段階から行政との連携を意識しておきましょう。

 

 

 

5. 導入・設計時のチェックリストと失敗しない工事のポイント

・既設設備との整合性確認：設置スペース、搬入経路、既存システムとの相性を事前に確認。

・専門業者との連携：発電容量、負荷設計、切替機能など、プロとの綿密な協議が不可欠。

・試運転・点検体制の確立：稼働確認のための試運転と、定期点検計画の策定。

・補助金制度の活用：自治体によってはBCP対策に関する補助金制度があり、導入費用の軽減が可能です。

 

 

 

6. 成功事例に学ぶ！BCP強化を実現した企業

● 食品工場

冷蔵庫・冷凍庫の電源維持のため発電機を導入。停電時の在庫廃棄リスクを回避し、大幅なコスト削減に成功。

● IT企業

データセンターに自家発電装置を設置。落雷による停電時も稼働継続し、顧客からの信頼を獲得。

● 医療施設

電子カルテ・手術室対応の電源確保を実現。災害時も医療提供を継続でき、地域災害拠点として機能。

 

 

 

おわりに：停電対策は、いまこそ行うべきインフラ投資

高圧受電設備と非常用発電機の連携は、BCP対策としてもはや不可欠な存在です。災害は予測できなくても、停電への備えは事前に行うことができます。

「停電が起きてから」では遅く、「今、備える」ことこそが企業の信頼と継続の鍵です。自社の業務特性やリスクに応じた電源インフラの整備を進め、信頼される企業を目指しましょう。

導入に際しては、経験豊富な専門業者と協働し、法令遵守・コスト管理・保守計画を含めた最適な設計を行うことが成功のポイントです。